車について考える。

本日起床9時前。
今日は代車で来ている初代デミオ(DW5W)でドライブをしようと名栗の山奥にある子の権現まで出かけた。

店で代車として使う車は本社の中古車部から二束三文になった車を持ってくるのが基本。
このデミオも中古車部から格安で買ってきた車である。だからドアがボッコリへこんでいたり、細かい傷があちこち多かったりと、見た目にはかなりヘタって見える。ちゃんと車検証を見ていないので分からないが今年に車検を終えているのでおそらく7年落ちの車だろう。
だが、走行距離はまだ4万5千キロ程度。乗ってやれば1,5リッターと言うこともあり元気に走るのだった。

つーかこの車でぜんぜんいいじゃん。

299の山道をそれなりのスピードで走りながらそう思ってしまった。
買い物に出かけたり、ちょっと遠出するくらいなら全然問題なし。
むしろ小さくて、街中などではヘタなセダンより断然扱い易い。
実際、自分のお客さんでも30代の半ばを過ぎたお父さんがこの型のデミオをファーストカーとして使っていたが、全然それもありだな、と思わせるに十分なのだった。
何もいい年になったからといってデカイセダンや真新しい新車に乗り換えることも無いのである。

だが、営業マンからしてみればそんなことは言語道断。7年も乗ればさっさと乗り換えて欲しいと言うのが本音だ。実際自分もそのお父さんに新型への乗換えを勧めていた時期もある。その人は結局乗り換えずに車検を取ったのだが……。今考えてみればそれも正解だなと思うのだった。
正直言って日常の足として、道具として使うことに何の過不足も無い。

そりゃあ、今の現行デミオ(DY)に比べれば乗り心地はガクガクしているしアンダーが出る。エアコンは付いているがCDなぞは付いていない。ロードノイズはやかましい、なんだかリアガラスからはビビリ音も聞こえてくる。内装だって、「え?『質感』って何ですか?」という問いが聞こえてきそうなほどそっけない作りである。
それでもはっきり言って十分使えるレベルにある。とゆーか積極的に「これでいい」と思わせてしまう何かがある。別に背伸びして高い車なんぞ買わなくていいじゃないか。……などと、ディーラーマンにあるまじき結論まで導き出してしまうのだった。

え? 何ですか? 買い物に使う新車が欲しい? じゃあ中古のDWデミオで十分ですよ。多少べこべこですが、コミコミ50万。エンジン快調、馬力十分。いざとなったら家族4人でも出かけられます。

と、お客さんに勧めてしまいたいところである。
で、あるのだが、そうは問屋が卸さない。我々は新車のディーラーマンなのでとにかく新車を売らねばならん。7年落ちどころか5年落ちの車、すきあらば3年落ちの車ですら代替の対象として虎視耽々と狙っている。
まだ全然走る車を代替させるなんてどうなんだろう……。とも思うのだが、その点はお客さんもお客さんだ。

『なんだかウチの車、べこべこになってみっともないなぁ。お、新しく出た新車かっこいいぞ。これなら街中走ってても威張れるかも、内装の質感もゴージャスだし。スゲー、馬力がウン百馬力だってよ、高速で追い越ししまくりだぜ』
なんて発想で車の買い替えを考えてやってくる。
お客さんが新車を見て気にするところは使い勝手は当然として、内装はどうか? 走りの加速感はどうか? デザインはどうか? と言うところだろう。
だが、これは車本来の用途としてはあまり関係の無い部分である。
内装なんて別に革張りでなくてもいいし、極端な話パーツの合い目がずれてたって良いし、プラスチッキーに見えようがなんだろうが、運転に支障が無ければどうでもいいのである。
加速感だって、今売っている車で日本の道路を満足に走れない動力性能の車なぞ新車で売っているはずが無い。別に他人の運転する車より速く走ったり、ビュンビュン追い抜きをする必要は無い。高速の登坂斜線だろうが、とにかく人が乗って80キロが出せる動力性能があれば十分なはずだ。
デザインだって、「乗る人のセンスを表す」ともいうが、正直言って日本の自動車のデザインレベルは全部似たり寄ったり。好きな人は好きだがダメな人は絶対ダメなデザインか誰もが気にもとめない空気のようなデザインか……。しかも乗ってしまえば中からは全く分からない。極端な話、人と荷物が必要な分だけ乗れれば四角だろうが丸だろうが三角だろうがどうだっていいのである。

……ところが世の中はそうはならない。
どうせ乗るならカッコイイのが良いし、内装の質感にもこだわりたい。なおかつ他人の車より速くて立派に見える車ならなお良し。といったところが車を選ぶ要素の中に入ってきてしまっている。
車はある種、自分のステータスシンボルとしての役割も果たしていたのだ。
車の営業マンという人種はそういう点を最大限活用してお客さんに車のよさをアピールする。
まぁ、一番重要な要素である安全性や燃費が全て似たり寄ったりなら、そこの部分でアピールするしかないわけなのだが……。
今、現場を離れてふと、考えてみると、なんだかなー。という気もしないでもない。

ところが今、その新車がトンと売れないらしい。その新車というのも普通車のこと。軽自動車が絶好調である。
まぁ、当然だわな。冷静に道具としてみるなら普通車よりも軽自動車の方が良い。
軽自動車の性能アップは目覚しい。ちゃんと日本国内を走れる動力性能を持っている。それにサイズはコンパクトで街乗りではすこぶる扱い易いし、何より維持費が安い。乗り換えるときも下取りも高値でトータルコストもかからない。
そりゃぁ、軽自動車に走るわけである。

軽自動車が売れているという話を聞くにつけ、「世の中やっぱり賢い人は多い」と感じる。
(でもまぁ、軽自動車が販売チャネル内に無い営業マンは「やっぱり軽より小型車の方が安全ですよ」「いざというときの余裕が違いますよ」とか何とかいいながらやり返すのではあるが……。まぁ、その通りなんだけど。)

自動車雑誌の「新型GT-Rは500馬力以上!」とか「レクサスLSは8速オートマ!」という空騒ぎや「さすが新型カローラは内装の質感がこんなに違う」などと吹聴しているのがなんだかむなしく見えて仕方が無いのであった。
そういう車の枝葉に過ぎない部分に惑わされず車選びを(中古を含めて)するのが一番賢い乗り方なのでは……。
ということをヤレたDWデミオを運転しながら考えてしまったのだった。




……
………え? ワタシ?
ワタシは枝葉にこだわりますよ。だって賢く無いもん。車を偏愛してますから。
時期型RX-7は3ローターNAだってよ! 何百馬力出るんだ!? スゲー!!