プラネテスを見終る。

先日から見ていたアニメ『プラネテス』を見終わった。

感想。とっても面白かったです。

正直、中盤まではタルかった……。
でも今にして思えばタルイ中盤までは終盤の盛り上がりへ向ける前フリだったのだと良い方に解釈してみる。
タルさを帳消しにする面白さがあったと言える。
昨日も書いたが前半戦はアニメ版のオリジナルエピソードにイマイチ切れが無く、原作のエピソードを間に挟んで何とか間を持たせているように見えたが、後半戦は汚名返上。
木星往還船のエピソードが始まると同時にストーリーが加速し、原作の一挿話だった宇宙解放戦線のエピソードをオリジナル展開で思い切り膨らませることによってテンションが一気に上昇。最終的に見て、ある意味では原作を超えた作品だったように思う。
とにかく、タナベとハチマキを主役に据えてそこを一点突破で描いたところが成功の秘訣と言えようか。

原作もハチマキとタナベが主役で二人を軸に物語は進んでいったが、エピソードによってはユーリが主人公であったりフィーであったり、はたまたロックスミスが主役であったりと実際は「木星往還船の宇宙開発における群像劇」のような描き方が成されていた。
だが、アニメ版ではそれら原作の群像劇的な要素をあくまで「脇役によるスパイス」として「いいとこ取り」でエキスをタナベとハチマキのエピソードに収斂させたことで「二人の物語」というテーマをはっきりと浮かび上がらせ、一貫したストーリーに仕立てることに成功していた。
だから分かりやすかったし面白かった。
終盤にかけての盛り上がりは中盤までのペケを帳消しにするデキでありました。
「丁寧に作られた」という褒め言葉があるが正しくそれがふさわしいお話だったように思う。作画的にも、そしてストーリー的にも。いわゆるアニメでは一般的ではない、王道から離れた主人公とヒロインをここまでちゃんと描いた作品も珍しいんではなかろうか。
最後に原作とは違ってハチマキが一発当てていたのには驚いたが。

いやー、面白かった。

え? 持つ者と持たざる者との葛藤はって?
あー、知らない知らない。俺には見えなかった。見なかったことにしよう。あれもスパイスです。
それにしては蛇足だったような気もするが……。こればかりはアニメ版の製作者の作品に対するエゴですな。

原作では作者の愛を一身に受けていた親父さんが、愛の後光が射さなかったためかどーでも良いキャラになっていたりフィーのエピソードが丸ごとごっそり抜けていたり男爵出てこないわ原作のファンから見て言いたい事もいくつかはあろうが、アニメ版がこう一つの作品としてまとまってしまえば無いものねだりと言うべきだろうか。
でも、原作でしばしばあった宮沢賢治の引用なんかはちょっと欲しかったか。いや、でも蛇足だな。
どちらにせよ、原作とアニメ版、どちらも一本立ちしつつ補完しあった作品と言えるのではないか知らん。
両方見て損は無いぜよ。

とまーつらつら書いてきたが、どーでもいいことなのだがオリジナルキャラがろくな目に合わないのは一体どういう仕様なのだろうか。
センセーは白血病で衰弱死するしチェンシンははっきり言って単なるかませ犬だし……。
つーか管制課の有能なエリートであるはずだったところのクレアさんがデブリ課に左遷された挙句、テロリストに身をやつし、ラストはロングヘアーからザンバラ髪の女囚にジョブチェンジというあんまりな転落人生っぷりには涙を禁じえません。うう、努力家のいい娘だったのに……。
まぁ、クレアさんの顛末とハチマキの成長を描くにつけ、

「人間、やさぐれちゃあダメよん」

というのが真のテーマであったと結論付けた今日この頃なのであった。