煙たがられないマニアックさ。

岡部いさく『クルマが先か? ヒコーキが先か?』読了。

今回もまた面白かった。
岡部いさくといえば『岡部ださく』名義で執筆している『世界の駄っ作機』シリーズが有名。当然学生時代に全部購入済であります。
昔のヒコーキやらのことなんて相当の物好きしか興味が無い。しかも現実にはまったくもって役に立たない。いわゆる単なるマニア、あるいはオタクの領域である。
で、そういうマニアや、オタクの人たちはその方面に対してものすごーく造詣が深い。
そして、その造詣がどこに生かされるかというと、特に生かされるでもなく、どうでも良い一般人相手にマニアックなうんちくをたれて煙たがられるか、嫌がられるのが関の山なのであるが……。

岡部いさくは、それで飯を食っている人なのである。

正直なところ『レシプロ機おたく』を自認するオレであっても『世界の駄っ作機』や『クルマが先か? ヒコーキが先か?』に登場するマニアックな機械群の8割方は聞いたことの無い名前のオンパレードである。
そこまで逝っちゃったマニアックな話題がひたすら羅列される書籍。
出てくる固有名詞の8割が聞いたことも無い書籍。
普通ならすぐに頭が痛くなって読む気も失せるというものである。

でも、読めちゃうんだなぁ、コレが。

マニアが陥りガチな「うんちくをたれて得意になっている」状態とはまったく違う。結局そういう人たちは「そんなに沢山知識がある自分が好き」なだけなのだ。が、岡部いさくの著書を読むにつけそういうのはホントのマニアではないんだろうな。と感じるのだった。

ホントのマニアは、そこにあるものが好きで好きでしょうがないのだ。もう、愛しちゃってるんであって、さらに恋しちゃってるんである。

しかし、それでもマニアのする話は、所詮与太話。
まぁ、見る視点を変えれば「恋人ののろけ話」を聞かされるのと大差ないだろう。「あの子のここがかわいいのよ~」というのが「あのマシンのここがとってもステキなの♪」というのに変わっただけである。

傍から見るとコレもイマイチ面白みは無い。(まぁ、物好きな人間は食いつくけど。オレみたいに)

岡部いさくの著作はそれプラスなんか普遍的なものがあるような気がする。
でなきゃ、こんなに面白くないはずだ。
まぁ、ちょっと考えてみただけでも、それがこの人のマニアックなものに偏らない広範な知識(文学・政治・経済などなど)から来るものであるということは分かるけど。
あと、更には、その興味を感じたマシンへとの愛情と、それを作り出した人間への愛情と考察も重要ではないか知らん。誰でも分かる「人間」というファクターを通してマニアックな事柄を解説する。これなら多くの人の心に響くはずだ……。

とまぁ、そんなどうでいい考察にもならないような感想を抱きながら本を閉じたのであった。
つーかほんとどうでもいいことだな、これは。

なにがいいたいかというと、なにはともあれ面白かったです。

クルマやヒコーキが好きな自分にとってはどんぴしゃでしたとさ。オススメです。

p・s でも古い車やヒコーキに興味のキの字も無い人にはオススメしませんヨ。