バチ当たり。

朝、ジリリリと目覚ましが鳴る。
布団から手を伸ばしてそれをとめた瞬間、

「あ、今日はダメだ」

無気力な自分に気づいてしまったのだった。
こうなるともう身体は動かない。う~ん、最近は調子悪くなかったのになぁ。
で、あるからして今日はサボりと相成った。

10時前にダラダラと起きてきて、ぐったりする。
と、店からTel。店長からである。
どうやら先日自分のやった商談相手から昨日、販売条件について電話があったらしい。
その電話を受け取って話を聞いた先輩営業マンに代わってもらう。
先輩は店長と相談して良い販売条件を引き出してくれていた。そのままその条件を先方に伝えて昨日の時点で先輩が商談に持ち込んでくれてもよかった。
だが、先方はどうやら俺と話をしたいと言ってくれたようで、「どうする?」と聞かれてしまう。先輩としては俺の体調も気にしてくれてのお言葉である。
確かに先方とは先日かなり長話をして親しい雰囲気にもなっていたので、先輩に全てを振るわけにも行かず、自分から連絡をつけると伝え、電話を切った。

う~ん、サボったのに仕事のことを考えねばならないのか・・・・・・。サボった意味がないではないか・・・・・・。

などとも思うが、今日、身体が動かなかったのはこのことを気にしていたというのもあるかもしれない。

気を取り直し、先方へ連絡を入れる。繋がったり繋がらなかったりしながらも何とか話が始まり、先輩が引き出してくれた条件を提示し、オッケーを貰ったのだった。

これで一台成約である。

しかし、先方は非常に忙しいらしく、月曜の午後にならないとまとまった時間が取れないとの事、つまりそれまではハンコが貰えない。
会社的にはハンコをもらえなければ成約ではない。研修の時も「口約束はいつでも簡単に反故にされる、とにかくハンコを貰え!」と頭に叩き込まれている。
そう考えると、軽々と「契約オッケーです」と店長に報告するわけにもいかない。
さりとて販売条件を出した店長に結果の報告をしないわけにもいかない。

車の営業というヤツは(まぁ、営業という職種は皆同じだろうが)こういうあちらこちらの都合に常に振り回されることになる。その関係をうまく調整して実績を上げるのが重要。

本来なら『一台成約』という餌を前に、そのあちらこちらの都合の辻褄合わせに色々頭を捻ったり身体動かしたり心を砕くのが営業マンという職種の仕事なのだが、今の俺は『一台成約』という餌に食いつくまいと自分を押さえつけるのに精一杯なのだった。

今の自分にはその仕事はまだ無理なのだ。出来なくもないだろうが、かなりダメージを食らう危険性大。

とゆーわけで、「まぁ、土壇場で成約にならなくても良いやー」と開き直って、素直に事の次第を店長に報告したのだった。
店長は

「ああ、わかった、じゃあ決着がつくのは月曜の午後になるんだな」

と冷めた口調でハードボイルドに答えたのだった。やれやれ。


なんとゆーか、「買ってくれる」と言っているお客さんが居るのに、その人のために一生懸命身体を動かそうともしないだなんて、なんてバチ当たりな。とも思う今日この頃・・・・・・あいも変わらず梅雨の曇天である。